建売住宅においては、完成品を購入することも多く、イメージが沸きやすいので注文住宅に比べれば不安感が少ない買い物だと思います。しかし、建売住宅は自分たちのライフスタイルを出来上がっている建物に合わせていく必要がありますし、どのような過程を経て完成したものなのかがわかり辛くなってしまいます。また、土地・建物が購入者所有となりますから、資産価値として把握するという意味では、建物の知識だけでなく土地についても知識が必要であり、二通りのチェックが必要になります。
一般的にマンションなどの共同住宅に比べ、個人住宅はほとんど法的な規定がありません。公庫融資付条件を満たしている物件であっても、現場検査といえば20分程度の目視検査が主になります。更にいえば、規模が100m2以下または1500万以下の物件であれば、施工資格はなく、何の資格も検定技術も登録も必要ではありません。小規模であれば、どこの誰であっても造れるということなのです。法の縛りがない分、購入者はよりこまかなチェックが必要になります。通常、販売している会社の営業の方から購入することになるのでしょうが、建築内容(施工)には買い手も売り手も素人で売買が成り立っているのが現状です。販売元の看板が大きくても、実際に工事施工を行うのは二次下請けやさらに下請けの方々だからです。そして販売には販売担当の営業者が立ちますので、売り手側が施工を知らないという事態が起こってしまうのです。
もちろん、このような販売システムの中に施工に詳しい方がいないというわけではありません。詳しい方が居たとしても、そういう方が担当営業者である確率は非常に低いということが言いたいのです。なぜなら、施工に詳しい営業マンが正直に話すと、売っている商品の「夢」の部分が少なくなって、結果としてお客さんを逃がしてしまいます。たとえば、お客様からデメリットについて聞かれたような場合を考えてみてください。正確な知識を持った方であれば、きちんと時間を割いて正直にお客様に伝えるでしょう。これによってお客側は検討の幅が広がってより正確な吟味が行えますが、営業マンにとっては成約に至る確立をあえて下げていることになります。デメリットに限らず、お客様から施工内容に関する質問があった場合も同じです。正確な知識があればYESとは言えないところであっても、正確な知識がなければ会社で教え込まれた台本をもとにYESと答えます。台本自体に間違いが含まれているかどうか、判断できないのですから罪はありません。ちょっと考えてみただけで、施工に精通した人間は営業には向かないと言うことがわかるでしょう。詳しいが故に販売成績が振るわなくなってしまうくらいなら、会社側があえてそういう方を営業担当にするはずはありません。適材適所とは、利益追求の大原則です。
また、下請け業者のジレンマも知っておくと良いでしょう。いい加減な工事しかできないような業者は敬遠され、いずれは倒産に至ります。しかし、逆に丁寧すぎる下請け業者も、経費や手間が掛かりすぎて仕事がこなくなってしまいます。結果として、ちょうど良い加減の仕事ができる業者が下請け業者として生き残ることになるのです。しかし、誰にとってちょうど良いのかと考えた時、必ずしも最終的にそこに住む方たちにとってちょうど良いとは言い切れない現実をお忘れなく。